見栄っぱり

 本屋さんで本を買うとき、レジに持っていくのが、何となく恥ずかしい本ってある。大抵は、Hな本。買ったことないけど。会計するときの気恥ずかしさを考えたら、買おうとも思わない。
 別の意味でやっぱり気恥ずかしい思いをしながらも、勇気を振り絞って、買った本がある。その名も
「確実に金持ちになる『引き寄せの法則』」
ちょっとストレート過ぎないか。お金持ちの人は、絶対に手に取らないだろうなぁ。この本を買うということは、『私、貧乏なんです。お金が無いんです』って、見ず知らずの店員さんに告白しているようなもんだし。

 一旦は、無視したものの、どストレートに私の心に響いてしまったそのタイトル。お金持ちになりたい私は、周りを気にしながら、ページをパラパラとめくった。

 初めのページに、筆者自身も3年前までは、普通の会社員だったけど、お金を引き寄せる秘密を知ってからは、年収が5000万超え!って。それは、この本を読んで理解出来る人なら誰でも出来ることなんだと。
『知りたい❗私もその秘密が知りたい。ここに書いてあることを実践すれば、私も3年後には、お金持ちになっているかも❗』
自分の努力次第。私のやる気次第だ。なんだか出来そうな気がしてきた。
ここは、この本を買うしかない。しかし、あまりにもストレートすぎるタイトルで、恥ずかしくてなかなかレジに行けな~い。
『3年後にお金持ちになるチャンスを、しょーもない見栄で潰してはならぬ❗』必死に自分に言い聞かせて、レジに持っていった。
 もちろん、店員さんは、事務的に会計処理をするだけだった。
「カバーは、かけますか?」
ひきつりながら頷く私。『当たりまえでしょ!』は、心の叫び。

 早速、帰りの電車の中で読もうとしたが、そこでもやはり、隣の人の目が気になってなかなか読めない。開くページ、開くページに左上に小さく「お金持ちになるための…」と書いてあるのだ。そんな文字、覗きこまないかぎり見えないだろうけど。

 本当にどこまで見栄ぱりなんだろう…私って。