似た者親子

長男が引っ越す事になった。

次の引っ越し先は、12月にならないと入居出来ないので、とりあえず我が家の使っていない部屋に荷物を運び込むことにした。で、引っ越しの作業も家族でやる事に。

私の担当は、引っ越しの翌日に最後の部屋の片付けだ。

「荷物はほとんど運びだしたし、後は細々した物が残っているだけだから」

と言い残し、本人は友達の結婚式に行ってしまった。

『なぜ、こんな時に結婚式?』

『いや、なぜ結婚式があるのに引越し?』

スケジュールの間の悪さに呆れながらも、恐る恐る部屋に入った。

4年前にやはり入居の引っ越しの手伝いをしてから、初めて入る。最初と最後だけ立ち入り、まるて引っ越し業者だ。

『本当に荷物全部運びだしたん?』

と思うぐらい、部屋中に物が散乱していた。よく見て見ると、ほとんどが掃除用具だ。各種洗剤にブラシやスポンジ。フローリングワイパー用のシートは、1年分ぐらいあるんじゃない?というぐらい大量にあった。6畳一間、キッチン、バス、トイレにそれぞれ必要な掃除グッズのストックが、狭い部屋をさらに狭くしている。

で、キッチンをみると、ガス台は油でギトギト。お風呂場の床には、どうしたらこんな色になる?という不思議な汚れかカビがこびり付いていた。トイレだけは、普通だった。ただ、全部運び出したはずなのに、トイレの上の棚を見あげると、大量の流せるお掃除ペーパーが積み上げられていた。

油ギトギトの台所は、豊富にある洗剤から油汚れ用を選んでこすると、すぐにキレイになった。

問題は、お風呂の床だ。あまりの種類の多さにどの洗剤を選べば良いか迷いながらも、頑固な汚れが落ちるというキャッチフレーズのものを振りかけてしばらく放置。少しはマシになったかな?

いずれにしてもハウスクリーニング代は、きっちり支払うらしいから、後はプロにお任せすることにする。

散乱している掃除グッズをまとめて、段ボール箱に入れると2箱になった。

実際には使わなくても、とりあえず買うことで安心するタイプ。まさに私だ。自分の愚行を客観的に見せられているよう。

 

数年前、洗面台の下のパイプから水漏れして、中に入っていたものを全部取り出してびっくりしたことがあったっけ。自分でも記憶に無い洗剤、スプレー缶の数々。買った事でいつでも掃除できる(やらないけど)と安心していた。

 

誰もいない息子の部屋で、掃除道具であふれた段ボールを見つめながらしみじみ思った。

「この親にしてこの子あり」

「子は親の鏡」

「子は親の背中を見て育つ」

最終日に、ちょっとだけ垣間見た息子の生活。

「アンタなあ、もっと、、、」

言いたい事がいっぱい出てくる。目の前にいたら、おそらくアレやコレやいっぱい言ってただろう。居なくて良かった。

私の学生時代を思い出したからだ。一人暮らしをしていたところに、田舎から母が来て、掃除や片付けをしてくれたっけ。それは良いが、必ずその度にだらしなさを責められて、イライラしていた。

同じ事を繰り返すところだった。しかも、私の母は、本当にキレイ好きで実家もいつもきちんと片付けている。が、私は、いい加減でなんとなく片付いている程度で、息子の実家である我が家は、要らない物に溢れている。いわば息子と大差無い。そんな私の小言なんて、息子からしたら

「お前が言うな」

というところだろう。

 

新しい住居に引っ越すまでの間、我が家のリビングで寝泊まりする事になった息子。

朝、スマホのアラームが鳴り、止めたはずなのに、また鳴り出した。おかしいなぁと思ったら、息子のスマホのアラームだった。目覚ましの音楽のチョイスも同じ。

やっぱり、似た者親子だ。