弁当に感謝

 テレビで東大の合格発表の様子を取り上げていた。
 合格者にレポーターがインタビュー、
 「誰に感謝の気持ちを伝えたいですか?」
 「親です。」
 「両親です。」
って、多くの受験生が答えていた。(そんな風に答えた受験生ばかりを集めて放送したのかもしれないけど)
 どんなことに感謝しているかというと、今まで応援してくれたとか、励ましてくれたとか、塾や予備校のお金を出してくれたとか。
 中でも、お弁当や夜食を作ってくれたことにたいする母親への感謝の言葉が多かった。
 東大に合格するだけでも親孝行なのに、その上しっかり感謝の気持ちまで述べて、なんと親孝行なお子様方。

 そこで我が身を振り返ってみた。
 私は、お弁当作りが苦手だ。今も中学生の息子にほぼ毎日作っているが、長男が中学生の時は、次男が生まれたばかりだったことや学校に学食があったこともあり、かなり手抜きをしていた。美味しさや栄養云々よりも、とにかく弁当箱を埋めることに必死だった。そんな弁当でも、最初は、完食してきていた長男だが、だんだん残すようになってきた。そのうち、ほぼ毎日学食で食べるからということで、お弁当の代わりに学食代300円を渡すようになっていった。正直、私もホッとした。体育祭かなんかで学校に行った時、学食でうどんを食べたが、驚くほど不味かったのを覚えている。他のメニューもさほど変わらないと思う。よくもまあ、毎日飽きることもなく、この学食で食べているもんだと感心した。でも、よくよく考えてみると、私の作るお弁当は、それ以下ということだったらしい、、、。

 学校までおよそ1時間半。小学校からの友達は一人も居なくて、周りは明らかに自分より賢い子ばかり。不安だらけで始まった中学生活だったろう。唯一の楽しみの弁当まで不味かったら、本当に辛かっただろうなあ。今から思えば、長男は、よく耐えていたと思う。

 東大合格を果たした受験生たちが、お弁当を作ってくれたお母さんに感謝するというのは、なんとなくわかるような気がする。一生懸命、頑張っているなかで、きっとお弁当でほっこりし癒され、次への頑張りの元になったんだろうなぁ。

 癒され、元気の出るお弁当を作らなかった母に、長男は、インタビューされても
 「お弁当を時々作ってくれた母に感謝してます。」
なんて、絶対に言わないだろう。いや、そもそも、長男は、東大受けていなかったわ。