肩凝り

最近、肩凝りがひどい。

元々がデスクワークが多く、1日のほとんどを座ったまま過ごすことも。最近は、仕事の合間もスマホをいじるためか、ますます肩凝りがひどくなった。

次男が私の後ろを通るたびに、肩を揉んでもらう。

「肩、揉んでくれー」

「え〜」

と言いながらも、一瞬揉んでくれる。

こんなところ、次男は優しい。

 

私が、ずーっとテーブルで仕事をしている間、同じようにずーっとパソコンをいじっている次男。まぁ、ほとんどがゲームだけど。こんな長時間、パソコンをいじっていられる次男に、ある意味、感心する。肩凝らないんだろうか?

若いって素晴らしい。

 

私も、最近まで「肩凝り」の感覚がわからなかった。肩を揉まれようものなら、くすぐったくて、逃げ出していたくらいだったのに。

 

子どもの頃、祖父に肩揉みを時々頼まれた。祖父は、その頃の私には恐怖の存在でしかなかった。

『なんで私?』

と思いながらも、逆らうことなど出来ない。恐る恐る祖父の肩に触る。子どもの小さな手で、祖父の大きな肩を一生懸命揉んでみるものの、かちんこちんの肩は、びくともしない。何にも感じなかったのか、

「首の付け根あたりを叩いてれ」

と肩たたきをする様に指示が変わる。祖父の機嫌を損ねないように、力を込めて叩き続けた。自分からやめられず、ひたすら祖父からの

「もういいぞ」

という声を待ちながら、叩き続けた。果てしなく続きそうに思えて、半分泣きながら叩いていた。

「おじいちゃん、疲れたでしょ。肩叩いてあげるよ」

なんて言葉は、口が裂けても言えず、とにかく解放されたい一心だった。今から思えば、なんと可愛げのない孫!

 

そんな日が何日か続いたある日、大きな「マッサージチェアー」が、我が家にやってきた。よく銭湯なんかに置いてあるやつ。

祖父が、買ったのだ。当時にしては、かなりの買物だったと思う。

『これでおじいちゃんの肩たたきから解放される』

私は、嬉しさと興味でいっぱいだった。しかし、当初は、子どもはその椅子に座ることも触ることも許されなかった。

それは、背中部分に大きな握りこぶしが2つ付いていて、スィッチを入れると、そのこぶしが動き出して、肩を揉み始める。高さは、横のハンドルをくるくる回して、丁度良い高さにそのこぶしの位置を調節したと思う。

その椅子に座って気持ち良さそうに、身を委ねていた祖父の姿が思いうかぶ。

祖父は祖父で、明らかにイヤイヤやっている孫に肩を叩いてもらうより、マッサージチェアーで心ゆくまで肩揉みする方が、良かっただろう。

 

誰もいない時、こっそりとその椅子に座ってスイッチを入れてみた。あまりの痛さに驚いて、慌てて飛び退いたっけ。

今時のマッサージチェアーと違って、無骨にぐるぐる、トントンするだけの至ってシンプルなものだったし、子どもの私には、必要の無いものだった。

それは、かなり長い間、実家の居間に鎮座していたが、いつの間にか無くなっていた。

 

今、その椅子が有れば、私も祖父のように至福の表情で座っていたかもしれない。