鰻の皮

 今年は、鰻が豊漁だというニュースを聞いた。そのおかげか、我が家でもすでに何度か食卓に上がっている。我が家の食卓に上がるのは、もちろん、中国産か台湾産で、なかなか日本産の鰻など誰かからいただかないと、食べられない。

 中国産の安価な鰻でも、ある技を使うと、美味しく食べることが出来る。何年か前のテレビの情報番組から仕入れた技だが、今だに忘れずに使っている技は、これぐらいだろう。

 まず、水道水で鰻の蒲焼きに付いているタレを、きれいに洗い流すのだ。この作業、安価な中国産鰻だから躊躇なく出来るが、お高い鰻だとものすごい罪悪感に襲われてしまう。
 次に、アルミホイルの上に置いて日本酒を振りかけて包む。そしてガスコンロのグリルで、7~8分焼くだけ。すると本当に、ふわふわになり、とてもおいしくいただけるのだ。タレは、食べる直前に別売のものをかけて食べる。

 先日、鰻丼にしてみた。白いご飯に蒲焼きをのせただけでは、蒲焼きを食べ終わると、ご飯だけ残りがち。そこで先にご飯とタレを混ぜて丼に入れた後、刻みのりを敷き詰めさらににタレ混ぜのご飯を入れて、その上に鰻の蒲焼きをのせていただいた。珍しく息子も美味しいと言って完食した。

 そして先日。スーパーで1パック500円という小さめの激安鰻をまたもや買ってきた。息子の「鰻丼が美味しい」の言葉に気を良くした私は、お弁当に鰻丼を作ってやることにした。

 朝から例の技を使い、お弁当箱の中に鰻丼を再現した。息子には内緒にしておき、驚く様子を思い浮かべながら、一人でニヤニヤしていた。

 そして、その夜。当然、完食と思っていたお弁当箱がやたらと重い。なんと半分も残しているではないか。しかも鰻が2キレもそのままご飯の上に残ったまま。
 
ガーン!
なんで?
もったいない❗

「鰻の皮が、なんかゴム食ってるみたいで、気持ち悪くなった。なんかトラウマになるわ」
だと。

 時間か経つと、当然、皮は固くなるわな。そこまで思い至らなかった私が、悪かったのか。

 私が、高校生だった頃のこと。学校から帰った私に、祖母が「鰻があるから食べるか」と、さしだした。

 喜んで食べようとしたら、パックに先っぽにちょっとだけ身がくっついている鰻の皮が、ビローンと横たわっていた。

 私もその後、しばらく鰻の「皮」が、トラウマになった。