自業自得

昨年末( 2020年12月)のとある日、私は、一人でテレビを見ながら好物の芋けんぴをポリポリと食べていた。もうそろそろやめようかなーと思ったその時、
『グギ!!』
『いったーい!』
左上の奥歯と奥歯の間に、芋けんぴの鋭い先っぽが、突き刺さったような気がした。
実際のところどうだったかはわからないが、その後から左上の奥歯は、何かを噛みしめる度に、ジクジク痛んだ。

今まで何度も歯が痛み、もうダメと思ったこともあったが、必死の歯磨き作戦で、乗り越えてきた。
しかし、今回は歯みがきをしてどうにかなるような問題ではなさそう。だって、グラグラしているんだもん。

年が明けても、歯の痛みは治まる気配もなく、食欲も失くなってきた。
とうとう重い腰をあげ、歯医者に行くことにした。

行くのは、もちろん私の壊滅的な口の中を知っている行きつけの歯医者さん。行きつけと言っても8年ぶりだけど。
私にとって口の中を見せるのは、裸を見せるより恥ずかしい行為だから、歯科医は女医さんの彼女だけ。

久しぶりの歯科医院は、建て替えらて近代的なビルになっていた。あまりにも久しぶりなので、まずは、レントゲンを撮るところから始まった。その後、個別の診療ブースに移動。そこには大画面のスクリーンが設置されていて、診察台に座るとさっき撮ったばかりの私の口の中のレントゲン写真が、大きく映し出されていた。

自分の口の中だが、直視出来なかった。現実を見たくなかった。まだ、60才前だと言うのに、現役バリバリ無傷の歯は、数えてみると8本しか無い。
『こんな歯では、私、長生き出来ないだろうなあ』
と、ボンヤリ思っていたら先生が登場。
優しい女医の先生からは、
『こんな歯でどうすんの?』
『よくここまでほっといたね』
『ちゃんと手入れしてるの?』
『今時、80才のおばあちゃんでもこんなに歯がない人いないよ』
って、心の声が聞こえてきた。私は、出来の悪い生徒のように身体を小さくして、診察が終わるのをひたすら待っていた。
で、診断の結果。
「もう根元が腐っているので抜かないとダメですね」
だと。また、1本歯の根っこが失くなってしまった。

今の私の口の中は、重要な戦士を一人欠き、軟弱な敵(食べ物)としか戦えない状態になっている。

自業自得なんだけど、つらい、、、