母の幸せ
田舎の母とのいつもの電話。
今日は、街までバスに乗って病院を2つ行ってきたとのこと。
一つは、内科系の個人のクリニック。もう一つは、総合病院の眼科。
個人病院の北川先生は、亡くなった父の行きつけの病院だった。父の付き添いで北川先生のところに伺ってから、お世話になっているらしい。
母は、かなり晩年まで慢性的な成人病とは無縁で、80歳近くまで薬も飲まず、北川先生に驚かれたそうだ。
さすがの母も、ここ数年は何種類かの薬を処方されて、毎月バスに乗って、病院に通っている。
そんな中、前回伺った時、診察を終えた後、北川先生が母の手を両手で握りながら、
「〇〇さん、元気でね。体大事にして、長生きしてよ」
と、まるで今生の別れのように言ってくれたらしい。
噂によると、北川先生自身も体を壊し、しばらく入院していたとか。
母は、もしかして先生、長くないのではないかと心配していた。
そして、また、北川先生の所に行った。先生はお元気で、そしてまた、診察を終えた後に、
「〇〇さん、元気でね。身体大事にして長生きしてよ」
と、両手で母の手を取って言ってくれたとのこと。
ありがたいなぁ。肉親でも家族でもない母にこんな優しい言葉をかけて下さる先生に感謝!
病院での診察を終えてバスに乗って帰路に着く。
乗客はたいてい母が一人。自然と運転手さんとも仲良くなり、いろいろ話し相手になってくれるらしい。
実家の前が終点で、乗客がいてもいなくても1日に何度か往復するバス。道路沿いの畑で毎日精を出す母を、いつも見ているのだろう。
「〇〇さん、あんまり働きすぎたらだめだよ。街に出た後ぐらいゆっくり休んでいてよ」
と、声をかけて下さるそうだ。母に限らず、行きに乗った方が帰りに乗らないと心配で仕方ないという運転手さん。たまに乗っていた方が乗らなくなったら、どうしているのかと心配している運転手さん。
ありがたいなぁ。嬉しいなあ。
便利とは真逆の山里の中で生活している母。
幸せだね。感謝します。