若返り

 「なんか雪積もってるみたい。」
私の頭上で、次男の声がした。
「やばいで、その白髪。」だと。
そう言えば、去年の年末に、亡くなった義母と一緒に染めて以来、そのまま放置していた。

 義母は、93歳という高齢にもかかわらず、白髪染めの薬剤を自分で買ってきて、自分で染めていた。最近は、私の白髪があまりに目立っていたらしく、自分が染める時に、一緒に染めようと声をかけてくれていた。私も、不器用だから一人では染めれないけど、義母と一緒ならと、お互いの髪に薬剤をぬりあって染めていた。

 義母が亡くなってからは、気にはなりながらも自分一人で染めるのが億劫でそのままになっていた。
 自分では見えないから白髪のことは、忘れていたけど、そんなに目立っていたとは、、、。
 そんな時、主人が行き付けの激安美容院に行くというのでついて行った。

 スーパーの一角にあるその店は、おじさんや子供が主な客筋で時々おばさんが混じっているという感じ。
 美容師さんは、おばさん二人におじさん一人。それぞれが担当する3つしかない席もフル回転で、それでも何人か待っている。
 おばさん美容師さんは、二人とも、長い髪を後ろに無造作に束ねていた。忙しくて、自分の髪に気を配る暇もないような感じだ。
 いわゆる、おしゃれな美容室にいるようなキラキラの若い美容師さんではなく、私と等身大のその地味な様子に、休日にもかかわらず家族のためにきっと一生懸命頑張っているんだろうなぁと、勝手に想像していた。

 私を担当してくれた美容師さんは、髪はボサボサなかんじなのに、爪には真っ赤なマニキュアが塗られていた。

 白髪染めが一番の目的だったが、ついでにカットもしてもらうことに。以前かけたパーマの後遺症で髪のあちこちが跳ねている。ふんわりとした段差のないボブスタイルにしたい旨を伝える。
 いつもは、ドキドキしてうまく伝えることが出来なくて、結局、美容師さんおまかせになり、仕上がりはいまいちな私。極めつけは、前にパーマをかけたときで、
「パーマをかける目的は?」
って美容師さんに聞かれ、頭が真っ白になって、言われたことにただ頷くのがやっとだった。結果、、、
 でも、今回は何かと自分に近いおばさんの美容師さんで素直に普通に話すことができた。

 それからが、すごかった。ものすごい速さでカットし、慣れた手つきで白髪染めを塗っていく。あまりにも早く作業か進んでいくので心配だったが、仕上がりは、自分でも久しぶりに納得。一緒に居た主人も、
「過去最高の出来だ」
と、ベタ褒めだ。

 髪も黒くなり、髪型もボブスタイルになり、少し若返ったような気がする。欲を言えば、もう少しふんわりさせたかったが、パーマの効き目がだいぶ薄れてきているから仕方ないか、なんて思いながらも、ご機嫌で鏡を見ていた。が、その時、ふと気付いてしまった。

 その日、遅く帰ってきた長男が、
「あれ、髪切ったん?阿佐ヶ谷姉妹みたいやな。」
って。

 そう、メガネをかけると、確かに似ているの。三姉妹になれそう。