涙の訴え

やっと高校生になったものの、暇さえあれば、オンラインゲームをしている息子。
入学したての頃は、
「部活が始まれば、こんなに出来ないし。今だけだよ」
と、言ってたっけ。その部活にもなかなか入らず、せっついてやっと公式テニス部に入った。今度はコロナで、リモートに。
結局、ずーっとゲームをしている。

中学校時代と違い、これからは成績が悪いと留年してしまう。実際、息子のクラスには留年した生徒が二人もいる。こんな調子でゲームばっかりやっていると、息子の留年もなんだか現実味を帯びてくる。
 
そこで主人が息子にゲームに関するお約束を息子に提示した。

1つ、やるべきことをやってからゲームをする。
1つ、ゲームの時間は、平日2時間、土日は4時間までとする。
1つ、朝は7:30までに起きないと、その日はゲーム禁止
1つ、夜は、11時までにゲームをやめて、12:30までに寝る。守らなかったら翌日はゲーム禁止

おとなしく聞いていた息子だったが、
「なんで、いつも俺の唯一の楽しみを奪うの」
と、声を震わせた。
こちらとしては、かなり譲歩した内容だと思っていたわけで、息子の反応に驚いた。
そこから、息子の涙の訴えが始まった。

「俺が遊んでほしかった時、全然遊んでくれんかった。二人とも忙しかったから仕方ないのはわかっている。そんな時、一人で遊べるもの見つけろって言ったやん。それで、俺、やっと見つけたんや。ゲームは一人で遊べるし、お金もかからん。やっと一人でも夢中になって楽しめるもの見つけたのに、なんで邪魔をするん!」

息子の訴えを聞きながら、今までの息子との接し方を振り返っていた。
確かに言ったよなー私。一人で遊べるものを探しなさいって。ゲームをしていると、一人でもお留守番できて良いわぐらいに思っていたよなー私。

息子の訴えをききながら、中村俊介さんのことを思い出していた。彼は、お母さんの仕事が終わるのを待ちながらサッカーしていて、日本代表にまでなった名サッカープレイヤーだよね。
なんで息子は、サッカーじゃなくてゲームなんだ、、、
という思いもあるけど、確かに忙しさを理由に、一緒に遊んであげていなかった。勝手に息子はわかってくれていると都合よく解釈していた。実際は息子なりに寂しい思いをしていたことを知り、胸がしめつけられた。

主人は主人で、ちょうどあちこち連れていってあげたかった時期に何処にも行けず、息子にたいして、後ろめたさを感じていたようだ。

よって、私達は息子の涙の訴えに負け、結局、1日のゲーム時間を決めるのだけは、無しにした。時間を気にしながら、ゲームをしたくないんだと。

今まで何度、ゲームをめぐる息子との攻防戦が繰り広げられてきたことか。そのたびに、結局いつの間にか息子の思い通りになっているという繰り返しだ。

息子を信じよう。

毎日、息子のキーボードを叩く音と時々発せられる奇声に眉をひそめながらも、余計なことは言わないようにじっと我慢している。

息子にしてやられたかな、、、