自分で買ったもので、一番高かったものって何だろう?
ほとんど親とか主人に買ってもらって自分が稼いだお金で高額な買い物などしたことがない。
そんな私の、自分で決断して買ったものの最高金額。ウン十万を2回。
1回目は、小学校の教師として働き始めてすぐのころ。スーパーの端で出張販売で売っていた印鑑だ。実印、銀行印、認印の3本セットで確かウン十万ぐらいだったと思う。材質は、何か忘れたがずっしりとした重量感とよく見ないと何と書いてあるかわからない書体が、そんじょそこらの安物の印鑑と違うぞ!と、主張しているようだ。
40年ぐらい前のことなので、経緯は忘れてしまったが、占いと絡めて購入したと思う。ちょうど、主人との結婚も含めて人生の迷子になっていた頃で、その印鑑を買うとこれからの人生は、バラ色、全てうまくいくと言われたかどうかは忘れてしまったが、そんな思いで、社会人としてスタートする自分自身へのプレゼントとして、清水の舞台から飛び降りたのだ。
その後、印鑑を使う場合はそう無かったが、学期末に子供たちに渡す通信簿に押した担任の私の認印が、校長先生のハンコよりもやたら大きくて、申し訳なかったのを覚えている。
3本のうちの2本は旧姓だが、1本は下の名前を彫っていたので、銀行印として結婚してからも使っている。
先日も使う機会があったが、何だか霊感商法に引っかかって買わされたハンコと思われるんじゃないかと、気になってしまった。
でも、そのハンコのおかげで主人と結婚して、それなりに幸せに過ごしているということにしておこう。
2回目の大きな買い物。実は、つい最近だ。それは、品物では無く、教材だ。
たまたま見ていたネット広告から見つけた「〇〇記憶方法」というもの。
そもそも何故、今さら記憶方法に興味を示したのか。
それは、高校2年生の次男に役立つのではないかと思ったからだ。次男は、暗記科目が中学生の頃から苦手で、中間テストでも絶望的な点数を取ったのだ。何とかこの記憶術をマスターして、これからの人生に役立てることができれば!という、藁をもつかもうとする親心からだ。
でも、最初からそれを前面に出すと、反発されそうだから、まずは、私がやってみて、その効果を実感させて興味を持たせる作戦にした。
実際、体験版で、60歳の私でも驚くほど記憶することが出来た。次男にもアピールする。円周率100桁も簡単に覚えることが出来ると言う。
「ホントかなぁ?」
私は、ともかく、将来のある息子たちがこの記憶方法をマスターすれば、人生の大きな武器になる。でも、その講義の値段が問題。体験が終わった後、いよいよ値段が知らされた。
ハンコと同じぐらい。
それを高いと思うか安いと思うか。塾の月謝と思えば、そんなに高くない。身につければ一生もの。息子だけでは無く、私も受講出来るし。なんなら長男も、なんなら主人も、、、
悩みに悩んで、再び清水の舞台から飛び降りることにした。
主人には、相談しなかった。
「アホか!」
と一蹴されそうだから。
それに私の稼いだお金で支払うのだから良いじゃないかと、自分に言い聞かせた。
体験の動画を見せていた次男には、
「続けることにしたから」
とだけ伝えた。
「いくらかかるん?」
と息子。
「まあ、それなりにね。なんか簡単に覚えれそうだし。とにかく、元をとらないとね。」
さすがに、値段は言えなかった。
「あっ、そう」
肝心の息子の無関心さが心配だが、無駄な投資とならないよう、せめて私が頑張るしかない。