母の遺言

 次男が中学生になってからというもの、たがが外れたようにゲームにのめり込んで行った。結果、当然の如く勉強のほうがおろそかとなった。うそや誤魔化しも多くなり、私は、毎日毎日、次男をしかり、イライラして過ごしている。

 次男は、塾に行き、長男と主人はいつものように帰りが遅く、母と二人で夕食を食べていた時のことだった。

「◯◯は、優しい良い子だよ。」

 母親以上に間近に、次男の様子を見ていて、次男も私のようにうるさく言わないおばあちゃんには、心を開き素直に接していた。

 母には、直接、次男のことは伝えていなかったが、私の様子や会話から、大方の予想はついていたようだ。
 
 突然の母の言葉に驚いたが、次男のことを誉められて、嬉しかった。
 いくら次男のことをほやいていても、そこは、母親だ。自分の子供のことを、たとえ祖母でもあれこれ言われるとつらい。子どもを通り越して、私の育て方を非難されているのかと思ってしまう。

 母は、5人の子どもを育てた子育ての大ベテランだ。主人をはじめ、個性豊かな子ども達を育てるのには、いろんな苦労もあっただろう。

 全てを見越して達観したような威厳さへ感じた。

「◯◯は、良い子だよ。」

 性懲りもなく、息子をしかり散らした後に、その言葉を思い出し、救われている。